山行No.3814(会) 谷川岳一の倉沢一ノ沢報告

2002年10月6〜7日
L.中村、大竹、稲垣晴、菊池、平本

 10月会山行の後発隊は、10/6朝一の倉沢出合で先発隊と合流した後、5人で予定どおり一ノ沢に入った。一ノ沢出合は水は流れているものの普通のガレ沢だった。しばらくは何もないが、滝が現れてきたところで登攀具を着けた。滝は水が流れており、クライミングシューズではどうかと思ったが、一ノ沢が2度目である大竹会長の「ウェディングシューズはいらない」という言葉から、全員クライミングシューズのみだったため、履き替えて登ることにした。登ってみると、思ったより滑らないことがわかった。しかし、次々と滝が現れ、ちょっとしたシャワークライミングまであった。滝はフリーで登れるが、ノーザイルでは危険なものが多く、高い頻度でザイルを使用したため、5人という人数では時間がかかってしまった。残置ハーケンもあるにはあったが、新たに打ったり回収したりした時間もあった。
 やがて、チョックストンの核心滝に突き当たった。大竹会長は前回左壁を登って懸垂下降したとのことだったが、取り付きからほとんど垂直で悪そうだ。他のルートも探してみたが、いずれもすっきりしておらず、結局そこを登ることにした。最初に菊池がリードで取り付くが、傾斜がきついのと残置ハーケンのききがあまいらしく、思い切れなかったため、大竹会長にリードしてもらうこととした。しかし、かなり悪いらしく、さすがの大竹会長も手こずっている。何とか垂壁部を越えたが、右へのトラバースも良くないようで、慎重にホールドを探している。残置はそれなりに有るようだ。トラバースから右に斜上してビレイ点らしくハーケンを打っていた。後続が登り始めたが、確保されていても皆やはり苦労して時間がかかっており、この段階で時刻はすで15:00を回っていた。もう日没まで2時間しかないため、この地点から下降することも提案したが、大竹会長の記憶では、核心部から上は3ヶ所くらいしか滝がなく、しかもザイルは1ヶ所だけで、シンセンのコルに抜ければ日没でも下れるだろうとのことだったので、
そのまま登ることにした。実際登ってみると、垂壁部は腕力登攀で、その上のトラバースは外傾したホールドが多いうえ土が乗っており不安定で、残置シュリンゲもあることはあったがかなり古いもので、つかむのに躊躇される状況だった。通常の沢登りの感覚で言えば(個人差はあるが)、「登るようにところではない」というのが正直な私の感想だった。
 全員が懸垂下降で落ち口に立ったのは16:00を回っていた。トップの大竹会長はどんどん先に行っているが、滝が3つどころかザイルが必要な滝が次から次に現れ、薄暗くなってきた。この段階でビバークの可能性が高いと判断し、16:30の交信で先発隊に連絡しようとしたが、交信がとれない。下部で良くとれていたので、おかしいと思い調べてみると、なんたること、電池切れだ。しかも、個人の充電式トランシーバーだったため、乾電池が使えない。悪いときには悪いことが重なるものだ。その先も滝は終わる様子もなく現れる。ついにヘッドランプをつけて登るが、それでも滝は続く。水流も続いており、ヘッドランプのシャワークライムだ。あたりはもう漆黒の闇に包まれる。やがて、さすがにもう大きな滝はなくなり、水流も消えた。だが、上部の様子が全くわからず、5人は4本のザイルにつながり、ひたすらコールを待つ。時々先頭のヘッドランプがあたりを照らしているのが見える。それにしても稜線まで遠すぎる。すでに東尾根に入っているのではと地図と磁石で確認したが、方向は合っているようだ。
それに、周囲の状況からしても尾根上ではない。
 そうこうしているうちに、予報どおり雨が降り出した。そろそろビバークを考えなければならない。23:00近くなって、トップは稜線に出たようだ。しかし、予定のシンセンのコルではないようだ。ザイルを固定し、10m程下った岩陰でビバークすることとした。何とか雨はしのげそうだ。不幸中の幸いか5人中4人がツェルトを持っていた。
 雨は夜も降り、風も吹いた。服が濡れていたので寒い思いはしたが、この時期としては気温は高い方だったろう。夜が明けると雨は小降りとなっており、周囲の視界もあった。下方にシンセン岩峰らしきものが見えた。地図を確認すると、途中から右俣に入ったため、東尾根のかなり上部にぬけたことがわかった。シンセンのコルまではかなり岩場を下らねばならない。
 雨は上がったもののガスが残り、視界は見えたり見えなかったりだった。下方は岩場が続いたため、慎重に懸垂下降し、3回でシンセンのコルに着いた。もう問題はないようだ。コルからさらに懸垂下降3回でシンセン沢右俣の源頭となり、水のないガレ沢を下りてゆくと、マチガ沢本流に降り立った。本流に大きな滝はなく、1回懸垂下降したのみで、途中から厳剛新道へ登り返してマチガ沢出合へ下山した。時間は12:00を少し回っていた。
 一ノ沢は10年以上前に会山行で入っており、やはりかなり時間がかかり、日が長い時期だったにもかかわらず、日没ギリギリの下山だったことは聞いていたが、今回のメンバーに当時のメンバーが2人いたため、正直あまり心配はしていなかった。しかし、結果的には、現れるほとんどの滝でザイル確保が必要な状況で、5人での遡行には無理があった。また、慣れないクライミングシューズで沢登りをしなければならなかったことも時間がかかった一因かもしれない。私にとっては、10年以上前の記憶があまりあてにならないという教訓になった。
 日没後の行動はルートを誤りやすいため、はっきりした一般登山道以外では一般的に好ましくなく、事実今回も誤ってしまった。しかし、今回の場合、夜には雨の予報だったため、沢の中でのビバークも危険性が高く、行動せざるを得なかったと思う。このあたりは、臨機応変に判断する必要があるだろう。
 いずれにしろ、先発隊及び会の方々に心配をかけた点、また、メンバーに欠勤させてしまった点、リーダーとしてお詫びしたいと思う。(不謹慎ながら、この程度ならたまには刺激があっていいという気持ちもメンバーの本音かもね。)

 最後に反省点をまとめ、今後に生かしたい。
1.計画の吟味(ルート調査を入念に行う。)
2.早期の撤退判断(行動途中で時間を読み、早めに判断する。)
3.無線機の確認(必ず電源のチェック、動作チェックを行う。)
4.予備日(不確定要因のあるルートには予備日をとる。)
 
(中村)