A隊 L.中村 仁(記録・写真) 稲垣晴夫(装備) 森 秀光(食料・気象)
B隊 L.大竹文雄(記録・写真) S.L. 谷内佳子(装備) 稲垣亮子(食料・会計)
畑 慎一(気象) 佐々木直行(食料)
行動
A隊 6日(土) 屋久島空港=宮之浦林道〜モチゴヤ谷出合(幕営)
7日(日) モチゴヤ谷出合〜潜水橋〜龍王滝上(ビバーク)
8日(月) 龍王滝上〜広河原(幕営)
9日(火) 広河原〜登山道〜永田岳〜鹿之沢避難小屋(泊)
10日(水) 鹿之沢避難小屋〜宮之浦岳〜荒川口(下山)
B隊 6日(土) 屋久島空港=永田林道終点(幕営)
7日(日) 林道終点〜560m付近(幕営)
8日(月) 560m付近〜1400m付近(ビバーク)
9日(火) 1400m付近〜ネマチ峰〜永田岳〜鹿之沢避難小屋(泊)
10日(水) 鹿之沢避難小屋〜宮之浦岳〜荒川口(下山)
行動記録
A隊 宮之浦川
8月6日
タクシーで宮之浦林道を入ってもらった。運転手の話では、林道が荒れているため屋久島総合自然公園先のゲートまでとのことであったが、行ってみるとゲートは開いており、かなり奥の工事現場まで入ることができた。当日工事を行っていたため、ゲートが開いていたようだ。
林道を歩き出すが、暑い。林道脇には関東周辺では見られないシダ類や大きな葉が多く、南国に来たことを実感させられた。また、屋久鹿の姿も頻繁に見られたが、丹沢あたりにいる鹿と比べて体がひとまわり小さく、子鹿のように見えた。
1時間45分程歩くと、予定のビバーク地であるモチゴヤ谷出合に着いた。橋の上にテントとタープを張り終わった頃強い雨が降り出したが短時間で止み、夜中は満天の星となった。
林道タクシー降車(14:45)−モチゴヤ谷出合(16:30)
8月7日(晴れたり曇ったり)
屋久島の夜明けは遅い。5:30に起床したが、まだ暗かった。明け方は曇っており、雨もちらついた。しかし、すぐに回復傾向となり、6:40に出発した。カネオリ谷出合の潜水橋までは30分程で着いた。潜水橋は、コンクリートの堰堤に大きな土管が何本か埋め込まれていて、水量が増えると橋の上を水が流れるためそのように呼ばれているらしい。事実一部水が流れたらしく濡れていた。
身支度を整え、入渓する。最初から巨岩が迎えてくれる。ルートを探しながら登るため、結構時間がかかる。ショルダーは有効である。左岸から入るナベカケ谷を過ぎなおも進むと、左岸に顕著なスラブが見えてくる。このあたりからマンベー淵と呼ばれるゴルジュ帯に入る。
マンベー淵は、両岸が垂直に近いスラブの中に巨岩がごろごろ挟まっている。第1巨岩は、大きな穴があり、荷物を背負ったまま通り抜けることができた。第2巨岩は、それと気もつかず過ぎ、最初の関門である第3巨岩に着く。記録で読んでいたアブミルートである。記録からは想像がつかなかったが、巨岩と右岸のスラブとのコンタクトラインにルートがとられている。残置ハーケンの数はかなりあったが、すべてかなり古く、すでに相当数が折れたりつぶれたりしている。残っているハーケンについても、とても体重をかける気にならない。しかし、躊躇している暇はない。取り付きにハーケンを1本打ち込み、空身で登った。ハーケンの問題は別とすると、アブミルートとしてはそれ程険悪ではなかった。ただ、落口の岩の乗越しに残置シュリンゲを使用するが、これとてかなり古く、注意が必要だった。このルートは、いずれ新たにハーケンやボルトを打たないと登れなくなるだろう。
荷揚げをしてなおも進むと、右岸より白糸の滝が流れ込む。水量が少なく、滝が糸のように見えるところから名付けられたのだろう。次のチョックストン滝は、少し戻り左岸側から高巻く。途中滝壺上部あたりで幅5m程のスラブがあり、これを横切るのに、立木を支点にザイルを使用した。このあたりの高巻きは、それ以降の高巻きを考えると、ごく普通の高巻きであった。その上の滝も合わせて高巻いて降りると、宮之浦川の盟主である龍王滝が姿を現す。さすがに高い。天から降り注いでいるようだ。
龍王滝の両岸は急峻なスラブとなっているが、それぞれチムニーが走っており、ルートになっている。これらの2ルート以外、左岸から合流している比較的大きな支沢から高巻くルートもあるようだ。しかし、いずれも相当の時間を要することは間違いない。この時点の時刻は12:30であり、日没までは6時間以上あったため、何とか登り切れると判断した。ルートについては、右岸チムニーはガレ気味で取り付く気になれず、左岸チムニーは登れそうだが、傾斜が強いため空身で登ることになり荷揚げを要すること、また、残置支点の古さの問題もあったので避け、結局支沢からの高巻きルートを選択した。
左岸に入っている支沢は、水量は少ないが本流と同じような渓相であった。高い側壁の間に巨岩が散在している。やがて8m程のチョックストン滝が現れるが、水流左手前の岩の右側に残置ボルトがあり、シュリンゲがぶら下がっていた。取り付いてみると、その上部には穴が切れたボルトの頭が残っていた。その先数mにはリング付きの残置ボルトが見えたが、とても届かない。ホールドもハーケンを打ち込むリスも無い丸い岩なので、新たにボルトを打たない限り登るのは危険な状況だった。一旦降りて、他のルートを探したところ、水流沿いが階段状になっており、登れそうなことがわかった。ザイルを引いて水流左から取り付き、水流を全身に浴びて横切ると、しっかりしたホールドがあり、登ることができた。
右岸側のスラブが次第に低くなってきたので、取り付けそうな所を探しながら進む。わずかな水流のある小ルンゼが目に入ったが、非常にぬめっており、取り付く気にならなかった。その上のスラブ滝は登れず左岸より巻くが、スラブに突き当たり、水流側に追いやられた。上部を窺うが、登れない滝が見えたため、先程の小ルンゼの地点までいったん引き返した。右岸側の状態を観察すると、スラブ滝の落口付近は立木が降りてきていることがわかった。再度高巻いて落口あたりに懸垂下降すると、容易に取り付けることがわかった。
立木を頼りに登り始めるが、すぐに垂直な高さ5m程のスラブに行く手を阻まれた。幸い倒木が掛かっていたので、これを利用して強引に木登りして抜けた。しばらく緩斜面になるが、再びスラブが現れる。このスラブは傾斜が緩かったため、左斜上して越えた。しかし、今度は垂直な10m以上のスラブに突き当たり、基部を左にトラバースすると、水流のある小ルンゼに出た。先に観察した、ぬめったルンゼの上部に出たようだ。ルンゼ通しはホールドが乏しく登れそうもなかったため、ルンゼを横切り、傾斜の強い斜面を木登りする。次第に立木が乏しくなり、ザイルを出す。しかし、1ピッチで傾斜が緩くなり、尾根が近いことがわかりホッとする。この直後、セカンドの森、ラストの稲垣晴の2名がジバチに刺された。トップの中村が、それとは気づかず巣を刺激したようだ。
やがて尾根に出て、下降にかかる。しばらく下って行くと傾斜が増すが、下方は再び平らになっているのが見えたため、1ピッチ懸垂下降する。降り立った地点に赤テープが確認できた。左岸チムニールートの通過点なのだろうか。さらに下降すると対岸にスラブが見え、急傾斜となって切れ落ちていた。まだ滝の途中のようだ。登り返して、赤テープの地点からしばらく水平にトラバースすることにした。しばらく行くと、急傾斜で切れ落ちた地点で行き詰まったので、登ってさらにトラバースを続けると、ルンゼに出た。このルンゼ沿いに下って行くと、落口であった。すぐ上には20mチョックストン滝が美しい姿を見せていた。落口左岸の岩棚でビバークすることとした。龍王滝の高巻きに要した時間は5時間10分、時刻は17:40になっていた。
モチゴヤ谷出合(6:40)−潜水橋(7:10〜35)−マンベー淵入口(9:20)−
第3巨岩登攀終了(11:00)−龍王滝下(12:30)−尾根取付(14:20)−龍王滝上(17:40)
8月8日(晴れたり曇ったり)
前日はほとんど雨らしい雨は降らなかったが、今日も同じような天気だ。朝一番から20mチョックストン滝の高巻きにはいる。右岸から取り付くが、ヤブも少なく登りやすかった。途中行き過ぎてしまい、スラブに突き当たったため、少し戻って岩棚をトラバースした。途中ジバチの巣があったが、今度は事なきを得た。途中のガレルンゼを下降し、河原に降りた。
しばらく行くと、本流は右に急角度で折れ、2段15mの滝となる。丸い岩の真ん中に溝があり、水が流れ落ちている。正面は小高塚沢である。小高塚沢に入り、尾根を越えるのだが、丁度尾根に出たところに赤テープがあったため、下るとすぐに急傾斜となり懸垂でなければ降りられなくなった。過去の記録ではコルから容易に降りているとのことで、稲垣さんに尾根筋を偵察してもらったところ、すぐにコルが見つかったため、ここから下降した。
この先も登れない滝が続くため、またすぐに高巻く。右岸を20mくらい登ると草付きバンドがあり、これをトラバースするが、右岸側壁のスラブに突き当たり、境目の水流のあるルンゼを上に追い上げられる。しかし、傾斜が強くなったため、一旦スラブに突き当たった地点に戻った。よく見ると、目の前の岩角に残置シュリンゲが残されていることに気がついた。そこで、とりあえず下降してみることにした。しかし、下降して上流を見ると、すぐ上に10m以上の滝があり、両岸がスラブで登れないことがわかったため、登り返した。この先を高巻く以外に方法はないことがはっきりした。ルンゼは急でかなり上部まで登る必要があるのに対し、スラブ横断は数mでブッシュ帯に入れるため、スラブ横断することにした。ホールドが微妙だったので、ハーケンを1本打って抜けた。そこからはすぐにブッシュ帯に入ることができ、トラバースを続けると、比較的大きな連瀑の支流に出た。支流手前を懸垂下降すると岩棚に出て、もう1ピッチ垂直な岩場を下降するとようやく沢に戻れた。
そこは河原であったが、すぐ上にチョックストンの真ん中を水流が流れ落ちている特徴的な20m程の滝があった。この滝は右岸を小さく巻くことができ、河原となった。時刻は12:45だったので、もう少し進むことにする。巨岩帯の河原ではあるが、まだまだ側壁は高く、高巻きは容易ではない。幸い、途中現れた6m程の滝は、左岸の岩棚を伝ってからショルダーで越えることができ、続くチョックストン6mはルートが見いだせず高巻きも考えたが、左岸の岩場を稲垣さんが空身で登り、ブッシュを頼りにトラバースして越えた。いい時間になったのでビバーク地を探しながら進むと、左岸に高いスラブが現れたあたりで比較的平らなところがあったため、ここで泊まることにした。
龍王滝上(7:20)−懸垂下降の登り返し(9:40)−C.S.上を流れる20m滝下(12:00)
−河原(12:45)−C.S.6m滝(15:00)−ビバーク地(16:15)
8月9日(晴れたり曇ったり)
ヤブこぎの大高巻きも3日目ともなると少々飽きてくるが、まだ上部ゴルジュ帯の高巻きが残っている。朝一番で小滝を右岸から小さく巻くと、ゴルジュの連瀑帯となる。側壁は高く50〜60mはあるだろう。過去の記録では左岸から高巻いているのがほとんどだが、右岸が容易との記録があり、試してみることにする。(もっとも、比較は難しいが)
少し戻り、急な草付きを草と木を頼りにどんどん登る。いい加減登ったところでトラバースを開始する。対岸のブッシュ帯がまだ高く見える。だんだん急になってきたため少し登りまたトラバースを続ける。途中立派な杉の木が何本か目にはいる。人知れず立っている立派な杉もまだたくさんあるのだろう。やがてヤブが薄くなり、ササの草原状となったところで1本とる。大高巻きはもうこれが最後だろう。ここから、稲垣さんにトップを代わってもらう。2条の滝が見えたところから下降にはいるが、だんだん傾斜が増し、トップで下っていた稲垣さんからコールがかかった。どうも垂直になっているところがあり落ちたようだが、その下は平らになっていたようだ。続く森も同じように落ちてしまった。よく見るとすこし横に倒木があり、それを伝って降りることができた。そこから下は急で危険なため、懸垂下降することにした。1ピッチではとどかないため、途中でピッチを切り下を窺うが、ブッシュでよく見えない。ザイルにぶら下がりながら少し下って下の状況を見ると、滝の落ち口のようだったためできるだけ上流方向へ降り立った。
そこは、本流がほぼ直角に右に曲がったところで、その先チョックストン滝がかかり、正面の枝沢にも斜瀑がかかっていた。もう側壁はさほど高くはなかったが、高巻くことなく2条滝の上まで登ることができた。その先は連瀑になっていたが渓相が一変しており、もはや険悪さは全くなかった。両側の斜面は緩やかで、ササとシャクナゲが混じったブッシュとなっており、滝はナメ滝であった。何ヶ所か巨岩の名残が現れ高巻いたが、もはや高巻きと呼べるものではなかった。連瀑が終わると、二俣となった。左俣は宮之浦岳へ、右俣は永田岳下の鞍部へ向かう。左俣の予定ではあったが、B隊との交信が全くとれておらず状況がわからなかったため、少しでも近い右俣をつめることにする。途中小柄で赤ら顔のヤク猿を見る。このあたりは猿の天国になっているのだろう。流れはみるみる細くなり、湿原に出ると登山靴の跡がたくさんあり、ようやくそこが登山道であることに気がついた。
登山道で靴を履き替え、永田岳山頂へ向かう。途中交信するが、依然とれなかった。ところが、山頂に着くと、隣のネマチ峰のピークにB隊の姿があった。なんたる偶然!!奇跡的な邂逅であった。永田川隊は右俣を予定していたが、二俣を見逃し、ネマチノクボをつめてネマチ峰に出たとのことだった。
AB両隊は合流後鹿之沢小屋へ向かい、遡行成功の美酒を酌み交わした。
ビバーク地(7:30)−ゴルジュの高巻終了(10:30)−二俣(11:05)
−登山道(12:30〜13:15)−永田岳山頂(13:40〜14:30)−鹿之沢小屋(15:00)
8月10日(晴れたり曇ったり)
朝3:00頃から他の登山者が起き出し、目が覚めてしまった。下山日だが、永田岳と宮之浦岳を越えて縄文杉コースを荒川口まで下る長丁場だ。永田岳直下の分岐で1本取ったところ、ここで、稲垣(晴)さんがテントのポールがないと言う。小屋に取りに戻るということで、他の7名で先行することにする。
焼野三叉路で荷物をデポし、宮之浦岳をピストンする。山頂で記念撮影し戻るが、稲垣(晴)さんは追いついてくる様子がない。ここからは稜線伝いにゆるゆる下る。新高塚小屋から高塚小屋へ下るに従い、ぼつぼつと人が増えてくる。縄文杉では大勢の観光客の中に紛れた。大株歩道入口まで下ると単調な軌道歩きとなり、飽きた頃荒川口の駐車場に着いた。稲垣(晴)さんは30分程遅れて着いた。
鹿之沢小屋(6:30)−永田岳分岐(7:25〜35)−焼野三叉路(8:35)
−宮之浦岳ピストン(9:30)−縄文杉(12:00〜12:25)−大株歩道入り口(13:40)
−荒川口駐車場(15:55)
記 中村
夏山合宿 宮之浦岳
(創立 35周年記念登山)
2005年9月11日