B隊 永田川
8月6日(晴〜曇り、一時雨〜晴)
定刻通り屋久島空港に降り立つ。昼食を済ませ、予約しておいたタクシーで永田集落に向った。宮之浦のスーパーでA隊と共に食糧や飲物等を補充する。A隊とは互いの健闘を誓い合い、ここで別れた。話し好きな運転手で屋久島の事を色々と話してくれた。一湊あたりから雨が降り出し、嫌な予感がしたが永田集落に着く頃には雨も上がり青空が見え出した。林道終点までは無理かもしれないと運転手は言っていたが、何の問題もなくトガヨケ沢出会の橋まで入ることが出来た。14時前に着けば少し行動しようと考えていたが、15時10分前だったので今日はここまでとした。永田歩道の登山口前の林道にテントを張る。
夜は久し振りに美しい満天の星空を見ることが出来た。
8月7日(晴)
4時起床、5時30分出発。15分程林道を進むと林道は崩壊しており、急に踏み跡程度のヤブ道となった。暫く行くとその踏み跡も消えてしまい、本流に下りることにした。広い河原には巨石がゴロゴロしており、今までに見た事の無い谷の様相である。大きな滝はないが、遡行は巨石の乗り越しと深い淵を避けて右へ左へと飛び石伝いに渡らなければならない。時には腰まで浸かり苦労する。特に軽量の亮子さんは流されそうになり、時間がかかってしまう。コスギタ沢出合を過ぎ、大きな深い淵をもつ滝を超えられず左岸を巻いている時にマムシに出会う。いつでも飛びかかれる体勢で我々を睨んでいた。この後も越えられない巨岩と小滝が続き巻くが、ヤブはなくコケ生した倒木と巨岩の間を登り滝上に出ることが出来た。左岸からミズドリ沢が出合、続いても左岸からトリゴエ沢が出会う。もう3時間も登っているのに高度は100mも上がっていない。亮子さんは遅れ出し、今日は何処まで行けるだろうかと心配になる。プール大の釜をもつ3mの滝を右岸から巻くと、やがて右岸からシラハマ沢が出合い、谷は右に大きくカーブしている。カーブが終るとインゼルが現れ、その上を見ると永田岳から障子尾根の岸壁群が見えた。谷はようやく傾斜を増してきた。尾の上沢が左岸から出合い、しばらく登ると左岸に大きな老杉が立っていた。この当りからヤクスギが現れ始める。なおも巨岩は谷を被い我々を苦しめる。右岸から正八郎沢が流れ込み、直に左岸から下タカヨケ沢出合った。高度もようやく500mを越え、今日の幕営予定地、坪切沢出合いまでもう少しだ。しかし、谷は前にも増して巨石が累々とし、迷路の中をさまよう感じだ。両岸も傾斜が急になり、高巻きはきつく慎重になる。皆の疲れもハッキリと覗えるようになった。右岸から水量の少ない小さな沢が出合い、高度的にも坪切沢であろうと判断する。14時と時間はまだ早いがテント場を探す。右岸の一段高い所に一張りのスペースを見つけテントを張った。その近くに八畳はあろう広さの平な巨石を見つけ、その上で濡れた物を乾したりしてゆっくりと寛ぐ。早めの夕食もここでとる。結局、谷内はテントに戻ったが他の4人はこの岩の上で星空を眺めながら朝を迎えた。
永田歩道登山口(9:30)−ミズドリ沢(7:55)−尾ノ上沢(10:15)
−正八郎沢(11:00)−560m付近の右岸から出合う枝沢(14:00)
8月8日(曇り〜一時雨〜晴)
4時半起床。大岩の上での夜明のコーヒーは最高だ。簡単な雑炊を食べ6時に出発する。40分ほど登ると左岸から水量の多い沢出合い、これが坪切沢であることが判明した。
(昨日坪切沢と思ったのはただの枝沢だったのだ。)ここから谷は急に狭まり、5mの滝が現れる。右岸から大高巻きし、続く滝も下りずに巻いた。やがて、左岸から上タカヨケ沢が流れ込む。ところどころヤクスギが目に付く。更に傾斜を増し小滝が続き、右岸から障子岳が出合う。衝立のような岸壁が障子沢左岸に見える。なおも巨岩の乗り越えと高巻きを繰り返す。下前の山沢出合いを過ぎ、谷は広がりヤクスギのあるインゼルで大休憩とした。畑が首のところをヒルにやられていた。ヒルが多いと云うことだったが、それ程多くはなく助かった。また、蚊や虻等も少なくそれ程気にならなかった。
今日は鹿ノ沢小屋までと気合を入れ直し登る。私の高度計で900mを越えたあたりでY字状二俣の右俣を畑と佐々木が先行しているのが見えた。時間や高度的、それに出合のイメージ等から予定ルートの右俣ではないと思い二人を左俣に戻した。(後で判ったのだが、この右俣が鹿ノ沢小屋に突き上げる沢だったようだ。)左俣に入って直の8m程の滝は左岸の小さな支沢を登ることにする。上部で本流に合流しているようにも思えた。この支沢4m程の滝で今回初めてザイルを出し右側のブッシュをホールトにして滝上にでる。ここで雨が降り出し、カッパを着て本流に下りる所を探しながら登る。幸いにして雨は15分程で止む。ブッシュを掴みながら本流に下り、上部を見上げると二俣が見えた。やっと右俣だと喜び合う。12時に二俣に着き、何の迷いもなく右俣に入った。小滝を二つ登ると40m程の大滝が現れ、ここがボルトとハーケンの残置がある大滝だろうかと思う。それにしても落ち口あたりは突破できそうもない。右岸は草付きの急斜面、左岸は覆い被さるような岩で高巻くことも出来ない。ここで、目指す右俣でないでかも知れないと話し合う。落ち口当りが良く見えないので大竹が空身で登ってみることにする。シャワーを浴びながら慎重に登り落ち口下に辿り着く。よく見たが残置は見当たらず、ボルトの連打で越える以外ない。私は諦め岩にザイルを掛けアプザイレンで降りた。引き返し別ルートを探すしかない。二俣を少し下った左岸に小さなルンゼを見つけ谷内がフリーで登って行った。15m程慎重に登るとヤクザサとなり腕力でグングン登る。シャクナゲ等のブッシュを掴みながらトラバースして滝上に下り立つ。皆、疲れが顔に出ている。もう13を過ぎ小屋までは無理である。この頃から青空が見え出し、ガスの切れ間に障子尾根の岩峰が時々顔を出す。ここから少し上がって8m程の滝も直登出来ず、左岸の草付きからブッシュへのルートをとる。取り付き上でハーケンを打ち込み、何とか大きなカンバの木までザイルを延ばして一安心。この1ピッチを5人が登り切るのに1時間半かかってしまう。もうビバーク地を探さねばならない。沢にも簡単に下りられる所にニ畳程の広さの平地を見つけフライだけを吊った。この下に3人入り、2人は近くでツェルトを被った。この夜も満天の星空だった。
500m附近支沢出合(6:00)−坪切沢出合(6:40)−二俣下(9:35〜9:50)
−ネマチノクボ−ネマチ沢(仮称)出合(12:00)−1400m付近ビバーク地(15:30)
8月9日(晴〜曇り〜晴)
5時起床、7:00出発。さすがに朝方は少し寒かった。今日こそは鹿ノ沢小屋で寝るゾー。
A隊と合流するゾーと元気よくビバーク地を後にした。昨日、偵察しておいたルートに沿って沢に下りる。水量も少なく、30分も登ると水は涸れてしまった。各自水筒に水を入れ、最後の詰めに挑んだ。急なガレ場は落石に神経を使いながら慎重に一歩一歩登る。2時間程でガレ場は終ったが、今度はシャクナゲやカンバ等のヤブ漕ぎだ。特にシャクナゲは枝が複雑に生茂っていて、ザックが引っ掛かり通過に苦労する。最後はネマチの西壁が目の前に迫り行く手を断たれてしまった。なんとかネマチの南側に巻かねばと賢明にトラバースに入ったが、又も急なガリーに足止めを食らう。木に登りルートを探す。このガリーを下ればなんとかなりそうなので岳樺の木にザイルを掛け懸垂した。20m下りた所は石の詰まった平地になっていて、ここからネマチの南側にも容易に行けそうな場所だった。本当にラッキーでした。5人が無事降り着き、大休息。岸壁の裾を巻くように登って行くと、開けた窪地に出た。上部を見上げるとネマチの南側に緑に被われた鞍部が見え、その鞍部を目標に登ることにした。ここからが私も体験したことのない苦闘のヤブ漕ぎが始まった。背丈以上もあるヤクザサとシャクナゲを押し分けて登らなければならない。冬のラッセルに劣らぬ体力と技術が必要である。突然、獣道や雨水の流れる所にでると嬉しくなる。少しでも楽になるし、登るスピードが上がるからだ。亮子さんは体力の限界に達したのか、フラフラになりながら賢明に登ってくる。鞍部に出て宮之浦岳をみて、初めて現在地の確認ができた。鞍部からもヤブは変わらず続く。何時のものか知れませんが古い赤布が3ヶ所に残っていた。10:30からヤブ漕ぎが始まり、13:00ようやくヤブから解放され永田岳U峰
に辿り着いた。このピークを遅れて登っていた私と亮子さんに、上から畑の声ありA隊の3人が居ると云うのだ。信じられなかったが、ピークに出て永田岳を見ると3人が立っていた。永田岳で合流出きるとは思っていなかったので最高の喜びを感じました。ここで20分ほど休んで、U峰を下り久し振りの登山道に出て、永田岳の頂上に立った。
創立35周年記念登山は宮之浦川と永田川の2ルートから入り、両隊共に無事完登して永田岳の頂上に達し、お互いに歓び合った。鹿之沢小屋では互いの苦労話を肴に最高に美味い酒を呑むことができた。
1400m付近ビバーク地(7:00)−ネマチ西壁基部(9:30)−南壁下(10:30)
−ネマチ・V峰鞍部(12:00)−U峰(13:00〜13:30)−永田岳(14:00〜14:20)−鹿之沢小屋(15:00)
記 大竹
2005年9月11日
夏山合宿 宮之浦岳
(創立 35周年記念登山)
行動
A隊 6日(土) 屋久島空港=宮之浦林道〜モチゴヤ谷出合(幕営)
7日(日) モチゴヤ谷出合〜潜水橋〜龍王滝上(ビバーク)
8日(月) 龍王滝上〜広河原(幕営)
9日(火) 広河原〜登山道〜永田岳〜鹿之沢避難小屋(泊)
10日(水) 鹿之沢避難小屋〜宮之浦岳〜荒川口(下山)
B隊 6日(土) 屋久島空港=永田林道終点(幕営)
7日(日) 林道終点〜560m付近(幕営)
8日(月) 560m付近〜1400m付近(ビバーク)
9日(火) 1400m付近〜ネマチ峰〜永田岳〜鹿之沢避難小屋(泊)
10日(水) 鹿之沢避難小屋〜宮之浦岳〜荒川口(下山)
A隊 L.中村 仁(記録・写真) 稲垣晴夫(装備) 森 秀光(食料・気象)
B隊 L.大竹文雄(記録・写真) S.L. 谷内佳子(装備) 稲垣亮子(食料・会計)
畑 慎一(気象) 佐々木直行(食料)