夏山合宿A隊 種池~白馬鑓温泉分岐(八峰キレット・不帰キレット)

期 日:2019年8月10日(土)~8月13日(火)
参加者:Lそうべぇ、コバヤン、オヨシ、ヒー

8月10日(土)
橋本(4:30)=扇沢登山口(9:30~10:00)-柏原新道-種池山荘(14:00)

オヨシ宅に4時30分集合し、圏央道、中央道と繋ぎ扇沢登山口へと向かう。お盆休みの初日でもあり渋滞を気にした。案の定八王子JCTで渋滞に捕まった。B隊は5時に橋本駅を出発しているはずなので、渋滞情報を共有のためメールで配信した。渋滞は八王子JCT付近のみでその後は順調に扇沢登山口に到着した。扇沢駐車場の手前から車道の脇に登山客の車と思われる車列があり、駐車場を確保できるか心配したが登山口の真正面に1台分のスペースが空いていた。すかさずそこをキープする。反対側で女性が1人こちらを見ているとオヨシが察知する。この女性とはその後、柏原新道の登りでこの女性を追い越す際に声をかけられた。「ラッキーだったわね。3分ほど前にそこの場所が空いたのよ。私たちは、登山口から遠く離れた場所に止めなければならなかったので、羨ましくて見ていたの。」とのことだ。渋滞には遭ったがこれで帳消しだ。
10時丁度に登山口を出発。登山口には夏山相談所が開設されていて、登山客それぞれに計画書の提出の有無や行程の確認を行っていた。我々も行き先を告げ、先を急いだ。

柏原新道

柏原新道は歩き始めの1時間30分ほど傾斜がきつく大変だ。荷物が重いのか大汗をかき始めた。コバヤンも大汗をかいている。オヨシとヒーさんは涼し気に歩いている。年齢を理由にはしたくはないが、もしかしてそうなのかもしれない。日々の鍛練・準備不足であることは否めないだろう。2000mを越えたあたりからそうべぇのペースが落ちはじめた。経験をしたこともない大汗をかいている。まるで水をかぶったようだ。水分補給をしながらの行動であるが、補給が間に合わない。コバヤンもすごい汗だが、その大汗を笑い飛ばし快調そのものだ。3人から15分ほど遅れて種池山荘前に到着した。

種池山荘手前

そうべぇのこのバテ様では予定の冷池まではとても行けない。また猿倉までの行程に不安があるので3人に相談した。幾つかの案があがり相談の結果本日は種池で幕営し、明日11日の行程は五竜山荘まで行くことに決めた。

爺ヶ岳を臨む

決めれば早い。早速今夜の寝床の準備のため種池のテント場でテントを張り、山荘前で夕食の準備を開始する。同時に宴会もスタートする。ビールを山荘で購入し飲む。冷たいビールを飲むと少しずつ元気が出てきた。軽い熱中症だったのかな?そして夕食の「チリコンカン」で体調も回復してきたので少し安心した。明日は予定通り五竜山荘のテント場までは行けるだろう。18時に就寝した。メンバーを不安にさせてしまったことは反省しなければならない。

8月11日(日)
幕営地(3:30)-冷池山荘前(5:20~6:20)-布引山(7:15)-鹿島槍ヶ岳南峰(8:15)-キレット小屋(10:15)

起床は午前2時30分、風もなく山は静かであり、眩いばかりの星明り。今日の天気が約束されているようだった。朝食は冷池山荘前で摂ることにして、準備出来次第出発した。

夜明け前の出発

ヘッドランプを照らしながらまだ眠っている山々の陰影を眺めながら進む。爺ヶ岳の登りはゆっくりと歩を進めていく。先頭はオヨシ、続いてそうべぇ、ヒーさん、コバヤンの順だ。爺ヶ岳山頂は春合宿でB隊(爺ヶ岳東尾根隊)が踏んでいるので、今回は山頂を巻くことにして冷池山荘へと急いだ。午前4時、夜が明けはじめる。

夜明けの雲海

まさに「暁」とはこのことだろう、とても厳かである。雲海に沈む谷や里はまだ目覚めるには早すぎる。稜線上から眺める景色、雲海の果ては深紅からオレンジ色に徐々に移り、山が目覚める。私たちは歩くことも忘れ、その瞬間を見守った。実際の目で見る風景にはかなわないとわかっていても、カメラを構えシャッターを繰り返した。

冷池山荘と鹿島槍ヶ岳

冷池山荘前には5時20分到着した。2時間ほど歩いてきたので、朝食が恋しくなった。小屋前で朝食の準備をする。「パスタとスープ」だ。山でパスタを茹でるのは初めての経験であり、茹でた後のお湯をスープとしていただくのは妙案であった。山でパスタを食べたいと思っていたが、茹で汁の処理を考えるとどうしても躊躇してしまう。食担の工夫が感じられる。お腹も満たされ、朝の陽ざしをいっぱいに浴びながら布引山へと向かう。冷池山荘からしばらく登るとテント場がある。山荘からテント場までは5分ほどの距離。このテント場を利用する場合夜のトイレなどに多少の不便を感じるだろう。

晴天の空と立山連峰

布引山までの稜線歩きは楽しい。布引山からは鹿島槍ヶ岳の南峰と北峰が臨め、双耳峰の立派な山容だ。

布引山にて休憩

アップダウンを繰り返しながら鹿島槍ヶ岳南峰には8時15分に到着した。

鹿島槍ヶ岳山頂

鹿島槍ヶ岳からの稜線

しばらく展望を堪能し、これから向かう八峰キレットに思いを馳せ、ヘルメットを着用し気を引き締めた。

八峰キレットへ

キレットとは漢字では「切戸」と書き、山と山をつなぐ尾根が深く切り落ちている場所のことを言う。通常の尾根よりも細く断崖絶壁もあるキレットは、難易度も高く、岩登りの基本的な技術が必要な場所でもある。八峰キレットは鹿島槍ヶ岳南峰と五竜岳にある難所。キレット小屋から五竜岳までは長い岩稜帯の連続であり、鹿島槍ヶ岳南峰からキレット小屋までは特に難所とされ、特にルートを下りにとった場合は更に難易度が上がる。私たちは南から北に向かうルートを取っているので、慎重に行動しなければならなかった。

慎重にトラバースする

随所に鎖が張られているのでザイルを使うことはなかったが、鎖に頼りすぎると自分の体勢を見失ってしまうので、岩登りトレーニングや救助トレーニングなどで培った三点確保をしっかりと意識しながら通過した。メンバーとは岩登りトレーニングなどで一緒に練習をしているので、お互いの技量は把握している。この点では信頼関係はできていて、安心して行動を共にすることができた。

五竜岳を臨む

八峰キレットの核心部を通過

しかし高度感があるので常に緊張していた。(合宿後であるが、よほど緊張していたのか口内炎が随所にできていた。これはストレスだと思う。口内炎は4,5日で消えた。)キレット小屋には10時15分に到着した。鹿島槍ヶ岳南峰からの降りの緊張感がキレット小屋に到着しほっとした。
小屋で購入しコカ・コーラを飲む、これが実に美味い。実は昨日、種池山荘前でコバヤンがコカ・コーラを美味そうに飲んでいる光景がよみがえり、おもわず購入した。これが本当にうまいのだ。小屋前で休憩中に長野県警山岳パトロール隊員と会話をした。今日の行程が五竜山荘でテント泊の旨を伝えると、「これからの行動ではぎりぎり間に合うかもしれない。しかしテント場の確保が難しいだろう。夏山シーズンであり、人気の山なのでテント場は12時前後でほぼ満杯となる。夕方に到着の場合は山小屋になる事を覚悟したほうがいい。また、今日は発雷の可能性もあるので注意が必要だ。」などのアドバイスをいただいた。鹿島槍ヶ岳南峰からの降りでの緊張、ここから五竜岳へ向かう岩稜帯での緊張を続けることのリスクを考え、翌日の行程も唐松山荘前まで行ければ計画は遂行できると判断。また予備日もあるのでここは無理をせずにキレット小屋にて宿泊することにした。ここにはテントサイトが無いので小屋泊となる。小屋番に宿泊を依頼すると、予約が前提であるため宿泊については了解してもらったものの、案の定注意された。テントサイトが無い山小屋の場合、キャンセル前提で宿泊予約はすべきなのか。寝場所に案内され、明日からの計画を練り直した。小屋のビールは高いが、冷たくてうまい。お昼から続いた宴会は、夕食へと移り、18時には就寝した。

8月12日(月)
キレット小屋(4:10)-五竜岳(8:15)-五竜山荘(9:30)-唐松山荘(12:30)

2時30分起床。いびきや寝言が入り乱れ、寝た気がしない。他の宿泊客も起きはじめ、出発に向けて準備をはじめていた。テントをたたむ必要が無いので、出発にはそれほど手間がかからずに済んだ。4時10分にヘッドランプを点灯させ出発する。昨日の発雷の可能性については、夜中0時頃に遠雷が聞こえたのみだった。雨は降らなかったので岩も濡れていない。朝露に湿っているくらいだ。空には満点の星、今日も天気がよさそうだ。

八峰キレット後半へ

岩稜帯の登山道を進んでいく。昨日と同じように稜線上にて日の出を迎えた。

雲海と朝日

ご機嫌なコバヤン

光景は変わらないが、厳かであり何度見ても飽きのこない瞬間である。明るくなるにつれ進む先々、全容が視界に入ってくる。

五竜岳手前の岩稜帯

五竜岳もどっしりとした山容で構えている。五竜岳の登りが少し大変そうであるが、そんなに遠くは感じなかった。五竜岳山頂に8時15分到着した。

五竜岳山頂

山頂では携帯電話の電波が入ったので、B隊の状況などが気になるのでメールを確認した。入山2日目に隊員1名が体調不良により、ダイヤさんとともに下山したとの知らせがあった。親不知までは長丁場となるので、早々に判断ができて良かったと思う。

五竜岳からの稜線

しばらく展望を堪能し五竜山荘へと向かった。しかし、五竜岳はどっしりとしていて大きいなと感じた。山荘でコカ・コーラを飲む。味を覚えてしまったようだ。唐松岳山荘には12時には到着したいと思い、オヨシにテント場の確保のため、少々急いで歩くように指示したが、韋駄天のようにアッという間に目の前から消えてしまった。今までのゆっくり目のペースで抑えられていた気持ちの反動なのだろうか。または、テント場を確保しなければならないという使命感からなのだろうか。
ヒーさん、コバヤン、私の3人の順でゆっくりと進んでいく。コバヤンのかかとが気になった。両方の靴のかかとが「ぱかぱか」しているのだ。いわゆる、靴のかかと部分がはがれている。どれくらいもつのか心配になり大黒岳で休憩中に尋ねると、本人も自覚していた。唐松岳山荘前には12時30分に到着。オヨシは11時45分に到着し、テント設営場所を探していたとの事。唐松岳の無雪期テント場は、唐松岳山荘の北西斜面があてられる。私たちが設営した場所は、小屋から4,5分ほど下ったところだ。小屋との往復に難儀した。テント設営後明日の予定について確認を行った。コバヤンの靴のかかと剥がれが気になり、明日の行程に支障が無いかを検討した。コバヤンの申告により、大事に至る前に明日は八方尾根を下り、扇沢で車を回収し、猿倉まで迎えに行くという案が出た。予備日を使い天狗山荘前、または白馬鑓温泉にて幕営を考えていたが、この提案により、予備日を使わずに猿倉まで下山できるだろうと考えた。不要となる共同装備もコバヤンに預け、身軽になって不帰キレットを越えることができる。計画の変更をメンバーで了承し、行動に移した。18時には就寝した。

8月13日(火) そうべぇ、オヨシ、ヒー
幕営地(4:35)-唐松岳(4:55)-不帰キレット(6:55)-天狗ノ頭(9:10)-天狗山荘前(9:20~9:50)-白馬鑓温泉(11:30~11:50)-猿倉登山口(15:05)

2時30分ごろ、ごそごそと起きだす。朝食の準備に取掛りながら、一杯のコーヒーを飲む。共同装備としてツエルトの代わりにフライシートを持ち、その他縦走に不要な装備はコバヤンに渡した。キレット通過に荷物を軽くできることは大きなメリットとなる。テント場でコバヤンに見送られ、山荘前に向かう。山荘にて水の補給やその他出発の準備を整え4時35分に唐松岳山荘前を出発した。ここから唐松岳までは20分ほどの登りである。小屋泊の登山客であろうか、軽装で朝食前に日の出を迎えようとして山頂を目指しているのだろう。唐松岳山頂には4時55分到着。

唐松岳山頂

最終日の日の出

多くの登山客が日出を待ちこがれていた。私たちも、山頂からの景色をしばらく堪能した。朝陽が上りだすと剱岳が薄いピンク色に染まり始める。今日もいい天気だ。

立山連峰の目覚め

唐松岳山頂からは、これから進む行程が良く見渡せた。天狗ノ頭まではすぐそこにあるようにも見え、近いなと感じた。しかし、アップダウンを繰り返さなければならず、山々の斜面も切れ落ち厳しそうだ。通過には慎重に行動しなければならないと気を引き締めた。
不帰キレットは唐松岳から天狗ノ頭に至る尾根で、コースタイムも5時間ほどの長丁場となる。天狗ノ頭からの急坂「天狗の大下り」を降りた付近は不帰キレットと呼ばれている。

不帰キレット

難所は、これよりも南側の二峰と一峰の間付近が核心部となる。ほぼ垂直な崖を降りなければならないので慎重さが求められる。三峰、二峰と慎重に進んでいく。

二峰南峰

危険個所には鎖が張られているので、ザイルを出す必要はなかった。ただ、鎖を頼りすぎると自分の体勢が作れない危険性もあるので、頼りすぎないように注意する必要がある。一峰には6時55分到着した。

不帰キレット核心部

緊張感が続く

核心部が通過できたので一安心した。

ご機嫌なそうべぇ

不帰キレットを振り返る

不帰キレットから天狗ノ頭までは急登が続く。「天狗の大下り」と名前がついているだけに、危険ではないが登りは険しい。登りきると広い大地が目の前に広がった。

天狗の頭付近

冬に登った白馬鑓ヶ岳

コマクサの群生、トンボの群れ、風わたる大地を飛ぶトンボは涼しげであり優雅だ。天狗山荘には10分ほどで到着、水の補給をして休憩する。水は残雪から供給されているので冷たくておいしい。ここから先は危ない個所は無いので、気持ちも落ち着く。30分ほど休憩をして鑓温泉に向かった。

鑓温泉分岐

鑓温泉分岐からの急な下りは、南斜面であるため日差しも強く、高度が下がるにつれ気温も上昇し蒸し暑い。

鑓温泉前のお花畑

この状態で鑓温泉までの歩きは疲れた。鑓温泉は、こんなところ温泉が湧いているのかと思うような場所だ。宿泊客、テント泊している人たちは登山客というよりも、山屋ではなく、温泉を楽しみに来ているように見えた。温泉は露天であり丸見え、入浴している人たちは気持ちよさそうだ。もちろん内湯もあるそうだ。夏山シーズンではなく、冬か残雪の時期に温泉を目的で来てみたいと思った。メールを確認するとコバヤンはすでに車を回収したとの事。靴の状態や荷物の量を心配したが、無事に下山できて良かった。私たちも15時には猿倉に下山するとメールにて連絡を入れる。12時前に出発した。ここからの3時間が私にとっては非常につらかった。南側の斜面、気温の上昇、湿度の高さ、これらが体力を消耗させた。なんど弱音を吐いたか。オヨシ、ヒーさんは涼しい顔をして歩いている。悔しいが、これも現実でありしょうがないと諦める反面、体力づくりのトレーニングを怠ってはいけないと反省する。後日談ではあるが、オヨシは膝に痛みがあり、ハイペースでの下山で猿倉まではやはりしんどかったようだ。ポーカーフェイスであるため、気がつかなかった。涼しい顔で楽しんでいたのは、ヒーさんのみであったようだ。
15時5分に猿倉登山口に到着した。

猿倉登山口

バス停前の茶店にコバヤンを見つけた。再会と握手、メンバーの協力のもとに夏合宿を成功で終えたことに感謝した。

(記 そうべぇ)

8月13日(火) コバヤン(八方尾根下山)
幕営地(6:00)-八方池山荘(8:30)-ロープウェイ乗場(9:00)=扇沢駐車場(10:20)=猿倉山荘前(14:00)

メンバーを見送り、6時にテント場を出発した。靴のソールをテープにて補修し歩くが、途中で完全に剥がれた。何度もテーピングを繰り返し八方池山荘前まで無事に到着した。
八方文化会館前でタクシーを拾い扇沢駐車場に向かい、車を回収した。猿倉に向かう途中で大町薬師の湯にて汗を流し2時間ほどくつろぐことができた。くつろぎながらメンバーに心の中からエールを送った。13時に薬師の湯から猿倉に向かう。14時に猿倉に到着。そうべぇさんからは15時に到着するとのメールが入っていたので、どのくらいの誤差で到着するのか楽しみに待っていた。15時5分に再会、到着時間にほとんど誤差のないことに感心した。無事に再会できたことをみんなで喜んだ。

完登に乾杯

(記 コバヤン)

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