会山行B隊 天狗尾根~ツルネ東稜

期 日:2020年2月8日~9日
参加者:Lみの、オヨシ

2月8日(土)曇りのち晴れ
相模原(10:00)=松川IC=美しの森駐車場(12:30)-天女山分岐(13:30)-本谷下降点(14:10)―出合小屋(15:20)幕営

私が入会して間もない一昨年の冬、例会報告で耳にした『八ヶ岳の天狗尾根』という響き。当時はどのような尾根か詳しくは知らないが登ってみたいという衝動にかられたことを今でも覚えている。暁ではここ数年で天狗尾根に二度アタックしている。

2016年3月(ナベタケ、コバヤン、ガク)
2018年2月(ガク、みのさん)

いずれも完登されているが、記録を見る限り、一筋縄ではいかなかったようである。今回の山行では経験者のみのさん先導で挑戦することになった。

昨年の10月にも訪れた赤岳・真教寺尾根の麓である美しの森駐車場から始まる。初日は出合小屋までの行程としたので登山としては遅めのスタート。広々とした駐車場には先行パーティーのものと思われる車が5台ほど停まっていた。冬は営業していない観光案内所裏手の舗装路を西に向かうと、すぐに川俣林道へと入る。今年は雪不足のため林道にはあまり雪は積もっていない。数ヵ所ある分岐付近には道標や看板があるので積雪が多くても迷うことはない。林道の半ばを過ぎた辺りで天狗尾根が見えてくると気分も高揚してくる。

林道から見える赤岳

林道は川俣川に近いので何ヵ所か支流を渡渉する。林道の終盤は樹林帯で、抜けると辺り一面が雪で覆われている地獄谷に到着する。

林道の終点、地獄谷

そこから先は5つの堰堤があり、左岸もしくは右岸のハシゴや階段で越えていく。間もなくすると、初日の目的地である出合小屋が見えてくる。

ぽつんと出合小屋

小屋は2~3テンを5張りくらい設営できる広さだが、既に大部分が使われていた。一番奥に2テンがギリギリ張れるスペースが残っており、そこに設営した。

テントで込み合う小屋の中

翌朝は日の出前に行動開始予定であったので、30分ほど周辺を偵察することにした。仕度を終えたみのさんは一足先に行き、暫くして私も後を追った。小屋から数十mのところに分岐があり、左手が地獄谷本谷(ツルネ東稜)、右手が赤岳沢に通じる。赤岳沢への道を進むと渡渉が数ヵ所あるので早朝は気を付けねばならない。暫く進むと沢の左岸に到達、赤布が見えるそこが天狗尾根への取り付きである。しかし、トレースが沢沿い方面や直登方面へと数本付いており紛らわしい。赤布もそれぞれの方面にあるため、単独行動での偵察はここまでにして小屋へ引き返す。分岐まで戻ると、本谷方面から10名ほどのシニア中心のパーティーが下りてきた。装備からアイスクライミングを楽しんでいたようで、小屋にテントを張っていたのも彼らであった。間もなく、みのさんも本谷方面から下りてきた。日も暮れてきたのでテントに入り夕食と宴の準備。美濃戸でアイスクライミングをしていたA隊が予定時刻を過ぎても行者小屋に着いていないとの連絡があり心配したが、体調がすぐれないメンバーがいて時間を要したとのことだった。一方、出合小屋では例の大人数パーティーが盛り上がっており、遅くまで騒いでいた。我々は翌朝3時起床なので20時に就寝した。

2月9日(日)晴れ
出合小屋(4:20)-カニのハサミ(7:20)-第一岩峰(8:00)-第二岩峰(9:00)-大天狗(9:20)-天狗尾根ノ頭(10:40)-ツルネ南峰(12:00)-出合小屋(14:40)-美しの森駐車場(16:30)

3時過ぎに起床、周りのテントはいびきの大合唱だった。朝食のラーメンを美味しくいただき、身仕度を整える。昨日最後に小屋へ入ってきたご夫婦パーティーも我々と同様に早朝出発のようだ。月明かりもなく、ヘッドライトを付けても視界が悪い。

暗闇の中、行動開始

昨日の偵察を思い返しながら、天狗尾根の取り付きまでは踏み抜きに注意しながら進む。取り付きに到着し、複数あるトレースの中で一番はっきりしていた沢沿いに向かうが、数十mでトレースが消えた。気を取り直して直登方面へ進む。雑草の上に雪がついているため滑って登りづらい。赤布の間隔が広いためか、先行者の道迷いで付けられた分岐トレースが相当あった。方位や地形を確認しながら暫く樹林帯の中を進む。取り付きから1時間ほど経つと左右が切れ落ちたナイフリッジに出るが、暗闇で周囲の様子が全く確認できない。

注意してナイフリッジを歩く

6時を過ぎると徐々に明るくなってきたが、まだまだ急登は続く。出発から3時間で岩稜帯に到着、カニのハサミが見えてきた。

カニのハサミ

確かにハサミ以外のネーミングが思い浮かばないフォルムだ。ハサミの間を直登することもできるようだが、我々は登ることなく左から巻く。続く10mほどの岩壁はダブルアックスで難なく登る。間もなくして一つ目の核心部である第一岩峰に到着。ここは岩壁を直登して稜線に抜けるルートと右手方向にある残置ロープを使ってトラバースしてから30mほどのルンゼを登るルートがある。今回は後者を選択。草の上に積もった雪はしまっておらず、トラバースすら不安を感じる。みのさんが先に行き、私は残置ロープ終端の立木でセルフビレイを取って待機した。

中央付近に見えるのが残置ロープ

ルンゼの頂上にある立木から40mロープを降ろしてもらう。みのさんから合図があったのでセルフビレイを解除してルンゼに向かうが、ロープの末端がどこにも見当たらない。見上げると5mくらい上の出っ張りに末端が引っ掛かっていた。慎重に登って末端に近付くが、足元が安定しない。さらに末端だと思ったものはロープの途中がU字になったもので、末端そのものはさらに5m上にある。ひとまずロープのU字部分を手に取り末端を引き下ろしたところ、急にロープが上がり始めた。どうやらみのさんが引き上げの合図を送ったと勘違いされたようだ。ルンゼで私の身体は反っており、焦ってストップの声も出せない。何とかハーネスにロープを括り付けカラビナで補助的に固定するのがやっとだった。第一岩峰を登りきり、安全な場所でロープを外す。みのさんからロープの取り付け方がおかしいことを指摘されので事情を説明した。声で合図を送ることが基本だが届きづらいときもあるため、代替手段も事前に擦り合わせておく必要がある。ロープを片付けていると小屋で一緒だったご夫婦パーティーが登ってきた。我々は邪魔にならぬよう先を急いだ。
続いて5mほどの岩峰が立ちふさがる。無積雪期ならロープなしで直登もできそうだが、今回は右から巻くことにした。足元の雪が想像以上に緩く、切れ落ちた右手側に寄らないよう慎重に進む。無事に通過すると、その先には第二岩峰と大天狗がそびえ立つ。

第二岩峰(左)と大天狗(中央)

第二岩峰は右から巻けるので難易度は低い。

第二岩峰を右から巻く

次はいよいよ大天狗、二つ目の核心部である。ここは岩壁を直登して大天狗の頂上を目指すルートと右手に少し下りながらトラバースして東側の狭いバンドに上がるルートがある。今回は後者を選択し、雪面をトラバースしてバンドの下に向かう。体感的にはほぼ垂直の岩壁を10m近く登らねばならず、万が一踏み外すと相当な距離を滑落しそうな場所である。まずはみのさんからアタック。思ったよりアックスの引っ掛かりが悪く、一手一手慎重に登る。少しハングする箇所があり一瞬ヒヤッとする場面もあったが、無事にバンドに到達。すぐに支点構築しロープを降ろしてもらう。安全確保されているがアックスが頼りなく、今回の山行で一番恐怖を感じた。バンドに到達して安堵したが、肝心のセルフビレイを取り忘れていた。いかなるときも気を緩めてはならない。小天狗を過ぎた辺りの開けた場所で一休み。大天狗と小天狗の間から富士山が見える、なんとも言えぬ絶景だ。

大天狗(中央)と小天狗(左)と富士山

しっかり腹ごしらえをして登山道への合流点である天狗尾根ノ頭へ向かう。

天狗尾根ノ頭へ


登山道に合流

天狗尾根ノ頭から先の登山道は、キレット小屋手前まで急峻なルンゼの下りとなる。歩きづらいだけでなく、下から強風が容赦なく吹き上げてくる。小石混じりの風が身体を叩きつけ、目も開けづらい。

急峻なルンゼを下る

キレット小屋の近くまで来ると風は穏やかになる。そこから樹林帯を登り返すとツルネの北峰と南峰にたどり着く。

樹林帯の先がツルネ


ツルネで記念撮影

後日談だが、C隊が赤岳から天狗尾根を見下ろした際、我々の想定ルートにトレースがほとんど見えなかったので心配してくださったようだ。
ツルネ南峰から先は東稜を下って出合小屋に向かう。ここからはみのさんに代わって私が先頭を歩く。

ツルネ東稜を下る

ツルネ東稜には支稜がいくつかある。特に右手の旭岳との間を流れる上ノ権現沢に下る支稜に入ってしまうと急峻な登り返しに難儀すると聞いていた。強風でトレースはかき消されているので先まで目を凝らす。

道標が見えるとあと少し

1時間ほど進むとしっかりした道標が現れ、そこから15分でツルネ東稜の取り付きだ。

ツルネ東稜の取り付き

出合小屋までは再び踏み抜きに注意して歩く。出合小屋に到着、あれだけ混み合っていた小屋の中はほぼ空っぽで、天狗尾根に向かった我々とご夫婦のテントだけが寂しそうに残されていた。手早くテントを撤収して装備もザックに片付け、前日通ってきた林道に沿って美しの森駐車場へ向かう。時折、後ろを振り返って天狗尾根を眺めて余韻にひたる。1泊2日の工程で余裕をもって挑むにはパーティーの人数は2名がベスト、多くても3名であろう(しっかりメンバーシップが築けていることが前提)。来シーズンにパートナーを連れていく約束をしているので、この1年はしっかりロープワーク技術を磨き、安全にリードできるよう経験を積み重ねていこうと思う。

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