春山合宿B隊 八方尾根

期 日:4月28日(日)~4月29日(月)
参加者:Lそうべぇ、ダイヤ、こま、かわまさ、りこ、おとっつあん

4月28日(日)雨のち吹雪
道の駅「白馬」(7:30)=八方P6駐車場(7:45)=八方山麓駅(8:00)=八方池山荘(8:40~9:10)-2600m付近(14:40~15:00)-2560m付近ビバーク(15:30)

暁は今年50周年記念の節目、元号も平成から令和に改元されGWも十日間の長期休みとなった。記念山行の一環として計画した春合宿は成功するであろうとの期待で、B隊は車を長野県白馬方面へと走らせた。天気予報は低気圧が近づいているため土曜日は崩れるが、日曜日は回復とのこと。高速を安曇野で降りたあたりから雨が降り始めた。昨年同様にみそら野交差点脇にある駐車場で仮眠をする予定だったが、雨の中でのテント設営は避けたかったので道の駅「白馬」の軒下を借りて仮眠した。
起床した時には雨は小雨であったが時折陽もさすので、天気の回復に期待した。7:30にスキー場の駐車場へと移動し、準備を整えた。8:00ゴンドラアダムは運行開始、昨年はこの山麓駅近くの駐車場はすでに満杯であったが、今年はかなりの空き状況だ。観光客は10連休の長期休みなので余裕を持った計画を立てているのかなと想像する。当然スキーヤーも少なく、ゴンドラリフトには待つことなくスムーズに乗ることができた。ゴンドラとリフトを乗り継ぎ八方池山荘前に到着、8:40だ。昨年より1時間ほど早く到着できた。昨年は快晴の中、合宿を終わることができたので、その成功体験から今年も楽しい山行が出来ることを期待した。今は悪天であるが必ず天気は回復すると信じた。八方池山荘では雨も雪に変わり、風も強いなと感じた。ガスがかかっているが北アルプスはかろうじて見ることができた。身支度を整えて出発。ここ数日は快晴、雨、雪を繰り返していたのか雪が安定していない。つぼ足では膝まで踏み抜くところがありワカンに履き替えるが、今度は木道が現れ、ワカンが木道の階段を嫌う。ワカンは数メートルしか役に立たなかった。第一ケルン、第二ケルンと高度を上げていくに従い、風、雪も強くなる。それでも天候の回復を信じて先に進む。台風並みの風に雪が激しさを増し、まるでブリザードの様だ。耐風姿勢を強いられることもあり、体が風に持っていかれそうだ。本当に天気は回復するのだろうか。風は一定の方向からではなく、あらゆる方向から私たちを襲う、ボクサーのパンチのように。登山者の数も昨年と比べると全く少ない。この嵐を予想していたのだろうか。八方尾根は白樺の木が少々立っているのみで、北アルプスの稜線から打ち下ろされる風から身を守る場所がない。休憩するも風に身をさらしながらの休憩であるため、休まらない。高度を上げるに従い尾根が痩せてくる。2500m付近からはほとんど人が一人ずつしか通過できないように雪の量も増している。トレースが雪ですぐに埋まってしまう。14:40頃2600m付近唐松岳頂上山荘手前の岩陵帯に出た。これを越えれば山荘だが、さてはて、どうやってこの岩場を通過すればいいのか悩む。雪が少なければ岩を巻くこともできるが、降り積もる雪の量が多く、表層雪崩を起こす危険があるので躊躇する。岩をそのまま通過するには中央のルートと右のルートの二つのルートがある。中央ルートは雪がべったりとつきホールドがあまりない。右ルートはホールドがそこそこにあるが右側が切れ落ちている。滑ると崖下に落ちてしまう。そして我々の装備にはザイルなどの登攀具がない。振り返るとよたにダイヤさんが手招きをして私を呼ぶ。メンバーの2人の体調がすぐれないとのことだ。何時間も強風や雪に身体をさらされ体温も奪われ、体調を崩してもおかしくない。15:00、もはやタイムアップである。岩場を超えることを諦め、少しでも風が来ない場所を探しビバークにすることを決めた。しかし、そんな場所がどこにあっただろうか。しっかりと風を避けられるような場所などなかった。岩場の手前50mほど下ったところに風が一瞬弱くなるところがあったことを覚えていた。そこまで戻りビバークにすることにしたが、すでにホワイトアウト状態であり、下山方向がわからない。目を凝らしガスが動いた時に下山方向を確認しビバーク地点に向かった。私たちの他にも2パーティが同じような行動をとってビバークした。風はおさまる気配などなく、より強くなっているように感じる。この場所でテント2張りは無理であるため、1張りに6人入ることにした。強風の中でのテント設営、しかも稜線上であるため慎重に準備するが、ポールを一本流してしまった。もう一つのテントポールを使う。また爆風のような風に襲われテントが飛んだ、と思ったがかわまさがテントの裾を掴みかろうじて飛ばされることを防いだ。テントはピッケルや張り綱で固定するが、設営場所は傾斜があるため張り綱が切れたら谷底に滑り落ちてしまうのではないかと不安を抱えた。心配であるがテントに入り暖をとった。寒さ、水分不足、シャリバテなどが原因なのか、震えが止まらない者、足がつる者が続出。卵スープを飲み、体を温めた。いつもならここから夕食の準備から楽しい夕食が始まるが、今回はその余裕がない。4、5人用のテントに6人のため、窮屈な格好で過ごすことになる。そして入り口付近が下がりはじめ、下がったところに人が引き寄せられまるで蟻地獄のようだ。風はまだ止まない。爆弾のような強風がテントを襲う。夜中の2時ごろに風の吹く間隔が長くなったことに気がつく。もう少しの辛抱だと思い夜が明けるのを待つ。眠ることができずに夜が明けた。テントの中にいても陽が昇ったことがわかった。結局、強風雪は17時間ほど吹き荒れていた。山の厳しさを教えられた一日だった。

4月29日(月)晴れ
ビバーク地(7:30)-八方池山荘前(10:00-10:15)=八方ゴンドラ山麓駅(10:40)= 駐車場(11:00)

早朝であれば雪も締まっているため、岩稜帯も岩を巻いて登ることはできるのだが、下山を決めた。

ビバーク地にて

快晴の中の下山は楽しい、昨日とは大違いでとても気持ちの良い雪山歩きだ。下るにつれて、登ってくる登山客とすれ違う。それはまるで砂糖にアリが隊列を組んで群がっているような光景に見えた。八方尾根は見晴らしが良い、唐松岳、五竜岳、富士山や八ヶ岳など素晴らしい眺めだ。高度を下げると爺が岳、鹿島槍が見えてきた。A隊は今頃どのあたりだろうかと思い、昨日の強風の影響はなかっただろうかと少しだけ心配した。八方池山荘前には10:00ちょうどに到着した。とにかく無事に下山できたことに感謝したい。あれだけの悪条件にも関わらず、メンバーの質の高さを頼もしくも思った。
帰路の車中ラジオ放送で、唐松岳に登山していた登山客が2500m付近で発見されたがその後死亡が確認されたと伝えていた。心よりご冥福をお祈りいたします。

(記 そうべぇ)

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